自転車の聖地にて、若いアスリートが熱くなる。
2014.11.1-3
第1回
「新人発掘!ユースキャンプ」開催!

浅田氏による講習会。ロードバイクの世界を知る。
浅田氏による講習会。ロードバイクの世界を知る。
左)必死でメモを取る子供達。右)丁寧だが熱の入る説明の浅田氏。
左)必死でメモを取る子供達。
右)丁寧だが熱の入る説明の浅田氏。
成長期の若者達も満足できる品数の多い夕食。
成長期の若者達も満足できる品数の多い夕食。
自己紹介でも何かを得ようとする気持ちが大切。
自己紹介でも何かを得ようとする気持ちが大切。
 自転車はヨーロッパではメジャーなスポーツだ。日本とは大きく異なる。子供の頃に感じた風を大人になっても感じられるように、今、風を感じている若者の夢が現実に近づき、メジャースポーツとして人気の高い国で勝利が掴める選手が現れるように我々は立ち上がった。
 2014年11月1日 ジェイ・ライド・プロジェクトが立ち上がった時からの念願だった「ユースキャンプ」が3日間の日程でいよいよ開催される。中学生・高校生の自転車の魅力に取り付かれた若者達が伊豆・修善寺のサイクルスポーツセンターに集まって来る。初日は生憎の雨。集合は17時。保護者の車に乗って若い力が徐々に集まってきた。
 参加する若者達は12名。余計な期待はしない方が良いと思いながらもここから世界を目指す選手が出てくるのではと考えると少しだけ興奮する。
 会議室に参加者が揃い、いよいよ今回のユースキャンプを実行するトレーニングディレクターで株式会社シクリズムジャポン代表/エキップアサダ監督の浅田氏が登場する。浅田氏からはロードレースとはどんな世界なのか、何を目指すべきかを的確な言葉で若者達に伝える。必死でメモを取る。世界に繋がる言葉を丁寧に書き取っている。子供達にはどこまで伝わっただろうか。答えはすぐには返ってこない。彼らが何年か先にロードレースの世界を目にする事があったとき初めて答えを見つけるのだろう。
 2時間ほどの講義が終了し、お待ちかねの夕食となる。合宿所として数多くのアスリートを受け入れてきたここ「サイテル」では食事もアスリート向けにかなり充実している。正直、驚いた。
 夕食後は自己紹介。名前と将来の目標を話す。皆の目標は大きい。彼らの目標が大きいほど我々の役目も大きくなる事を実感する。
 2日目の朝、お揃いのジェイ・ライド・プロジェクトジャージとヘルメットに身を包みトレーニングが開始された。
 午前中は日本競輪学校内の1kmコースを使用させて頂き集団走行に必要な技術を身につけるためのトレーニングを行う。二人一組になりギリギリまで近づけ並走する。その後はバリエーションを変え、あらゆる状況でも集団走行が可能になるよう何度も繰り返し走行した。この1kmコースは平坦ではない。登りや高速コーナーなど短いコース内にあらゆる状況が詰まったトレーニングに適したコースだ。気を抜くとすぐに集団走行のバランスが崩れてしまう。楽しそうに走る子もいれば必死で走っている子もいる。レベルはバラバラだが時間とともに集団が落ち着いて来る。子供達の学習能力は相変わらず高い。
 昼食を挟み午後からは400mのバンクを使った走行練習とショートスプリント。バンクの走行は初めての子供達がほとんどであり、緊張しながら周回を始めた。どのポジションで走行すると走りやすいかなど確かめながらの周回。初めてのバンクはあっさりと克服。ウォームアップが終了し今度は先頭交代のトレーニングへと移る。トップスピードで走らないようにしているつもりでもトレインを組んでいると自然にスピードが上がってくる。気を抜くと集団からちぎれる子供達。必死で集団に戻る。頑張れ、負け るな。と、なぜか応援したくなる。

お揃いのジャージは参加者へのプレゼント。
お揃いのジャージは参加者へのプレゼント。
日本競輪学校内の1kmコースに挑戦する。
日本競輪学校内の1kmコースに挑戦する。
コンパクトにまとまった集団走行練習。緊張感が伝わる。
コンパクトにまとまった集団走行練習。緊張感が伝わる。
全員で行う集団走行練習。
全員で行う集団走行練習。
 そして実力が数字で見えてしまうショートタイムトライアルが始まる。最初は200m。最後までもがけるか、勝負のポイントである。苦しくても最初から最後までダンシングで走り抜ける強い気持ちが必要となる。一瞬の気のゆるみでシッティングになると急激にスピードが落ちる。今時は聞く事もない「根性」が試された。時々降る雨が冷たい。それでも子供達は走り続けた。
初めてのバンク走行。どこを走れば良いのか探りながらのチャレンジ。
初めてのバンク走行。どこを走れば良いのか
探りながらのチャレンジ。
バンクを走り抜ける参加者。
バンクを走り抜ける参加者。
中学生は500m、高校生は1,000mのタイムトライアル。必死でもがけば大人でも心が折れる距離だ。もう足が動かなくなっているかと思っていても彼らはまだまだ大丈夫。最後は全員でレース。最初の周回はお互いが牽制し合う。飛び出しても集団の力にはかなわない事を知っている。そんな中、一人、果敢にも逃げに挑戦する。集団に飲み込まれる。やってみなければわからない。逃げに挑戦した彼に感動を覚える。結果は高校生の単独走行が勝利した。駆け引きと実力が備わっている。

3日目。前日の曇天と強い風からは想像できないほどの晴天。今日は5kmのサーキットを使ったトレーニングとタイムトライアル。最後は模擬レースだ。貸し切られたコースは広く人間が点に見える。そんなコースを試走から始める。ここサイクルスポーツセンターの5kmコースはその他のサーキットよりもアップダウンが大きく、平坦な場所がほとんどない。最もきつい坂では12~3%はあるのではと感じた。キツいのはもちろんだが何よりこのコースは様々なレースが開催される。今このタイミングでこのコースを知っておく事は将来必ず役に立つ。なぜならツアーオブジャパンでもこのコースを中心にコースが出来ているのだから。そして午前中の最後は5km個人タイムトライアル。きつい坂が続くこのコースでは1周のチャレンジでもかなり体力が消耗する。下りもテクニカルで急な坂が続くため気が緩めない。子供達の歯を食いしばる顔。必死の走り。この気持ちがゴールに届け。全員が走り終わる。前日から見てそれぞれの実力差がはっきりとわかる。身体も気持ちも砕けている者もいる。それでも2周目にチャレンジする者を募る浅田氏の声。走り終えたばかりの彼らにはまだチャレンジできる気持ちがわき上がってこない。辛いだろう。でもこのチャンスを無駄にしてほしくない。
自然に囲まれた5kmコースは地形も自然のままでアップダウンが激しい。
自然に囲まれた5kmコースは地形も自然のままで
アップダウンが激しい。
秋の風を感じながらのライディング。
秋の風を感じながらのライディング。
2周目を挑戦した者にしかわからない何かがあるかもしれない。最終的に5名の若者が2周目にチャレンジ。結果は様々だが5人にしかわからない何かを掴んでほしい。午前の練習が終わる。
 午後は模擬レース。頂上をゴールにするためスタートラインを移動する。レースはコースを2周。タイムトライアルではないのでポジション取りなど駆け引きで順位が変わる。いよいよスタートだ。スタートと同時に力のある中学生が飛び出す。若い力は見ていて心地いい。2km先のストレートではすでに集団はばらけていて体力のある高校生が逃げている。後半は登りだ。体重の軽い中学生にもチャンスはある。頂上で待つ我々に静寂が訪れる。誰が一番に登ってくるのか。来た。やはり高校生が先頭を走る。しかし思っていた以上にバラけてはいない。点々と千切れた選手が登ってくる。まだ1周目。体力は大丈夫だろうか。また静寂が訪れる。ゴール付近は寒くなってきた。来た。やはり高校生だ。彼は昨日今日とほぼ1.2番でゴールしている。現時点では彼が一番力があるのだろう。余裕のゴール。2位とは10m以上離している。しかし2. 3位は中学生だ。驚きであると同時に楽しみでもある。
 本日2度目の模擬レース。2度目は先ほどのレースのタイム差を配慮し、後半にゴールした選手がスタートした後、先ほど上位に入った選手は3分遅れでスタートするハンデキャップレースとなった。まずは6名がスタート。落ち着いたスタートだ。この落ち着きがレースを左右する事になる。3分が長い。スタートを切れない選手から緊張感が伝わる。そしてスタート。

模擬レースのスタートラインに立つ。緊張の瞬間。
模擬レースのスタートラインに立つ。緊張の瞬間。

1回目のレースでの勝者は高校生。さすがの走りで差をつける。
1回目のレースでの勝者は高校生。
さすがの走りで差をつける。
全力を出し切ってのゴール。
全力を出し切ってのゴール。
本日2回目のレース。勝者は最後の坂で逃げきった。
本日2回目のレース。勝者は最後の坂で逃げきった。
前半スタートの選手がストレートに入る。ほぼまとまって走っている。ぎこちないが先頭交代を続け協調体制が整う。速かった後半スタートの選手がストレートに入る。1分20秒差。すでに半分のタイムが縮まっている。先頭を捕まえるのは簡単か。物足りなく感じた。暫くの静寂。先頭が頂上に向かってくる。前半スタートの選手達だ。1名遅れたようだがそれ以外は集団をキープしている。上り坂でも協調体制が保たれていた証拠だ。後半スタートの選手がやってくる。時計を見る。1分15秒。差が縮まらない。彼らは単独で走行しているからだ。お互いが牽制し合って協調できていない。下克上のチャンス。グランツールでも協調し合えなかった追走集団が先頭に追いつけなかったシーンを何度も見てきたがここでもそんなシーンが再現された。
 静寂。伴走車の音。来た。先頭は。クロモリフレームの中学生だ。最後まで協調体制を崩さず最後の坂道で勝負が決まったようだ。20年ほど前に山本雅道氏がレースで勝ったフレームが再び勝利した。先頭を守り続けた集団がゴールし、そのあとを後半スタート組がゴールする。差は詰めたが最後まで協調できなかった集団は個の力に頼り、もう少しという所まで追いついたが結果は協調した集団に大きく差をつけられゴールする事となった。どんなドラマがあったのかは走った本人にしかわからない。ただ、2つのドラマが存在し、その結果が大きく異なった事は彼らにとってすばらしい経験となったと信じたい。

 3日間の合宿が終わった。
 彼らは何を得ただろうか。次にユースキャンプを開催する時にはさらに成長した彼らを見てみたい。何度も驚かされた子供達の成長力に期待して。

集合写真
(2014.11.10)